20160912
いつの間にか私の席から一番遠くに置かれていたはずのそれが、手の届くところにあった。
それはソガさんのメビウスや、ゆくみさんの黄緑のアメスピが空になってしまったせいかもしれない。
初めて見たそれを手に取る。これなんですかと聞いてみると、中国の煙草だよ、と誰かが答えた。ふーんと思って開けてみる。ソガさんが吸ってみなとそそのかす。私は煙草を一本とりだし、近くにあったゆくみさんのライターを手に取る。トントントンと、煙草を机にやったものなら 吸い慣れている と言われてしまうかもしれないと思い、少しもったいぶりながら煙草をくわえてみる。
「煙草吸ったことあるの?一本吸っただけでガンにならないでよ。」
そんなようなことをあの人は私に言った。ふふふ、と笑えてしまった。私が、主にあなたが吸うから煙草に興味を持ってしまったということを、知らないのね。
吸い込んで、吐き出す。
コクがない、旨味ない、とソガさんは言う。よくわからないけど、美味しいほうではないなとなんとなく思った。
何かに気付き、何かをしなくてはならなくて灰皿に煙草を置いて席を立った。戻ると煙草は小さくなっていて、残念だなと思いながら揉み消した。
その後もう一度吸っても不自然じゃない距離にあったから、一本取り出して吸ってみる。
気に入った?いやあそれにしても煙草が似合うねえ。昭和ってかんじだよ。20歳上のソガさんが言う。わたし平成生まれなんだけどな。
でもよく言われる。そうなの 煙草が似合うみたいなのよね。そう思いながら一本最後まで吸った。あの人は、どんな顔してただろ。