交換日記

ももちゃん

P.55

刑事はとたん、妻を失うのが怖くなった。そんなことを恐れるのは、若い日に、まだ妻の耳元で睦言をささやいていた頃以来である。しかし今日のそれは当時のような愛情の証としての空想とは真逆の、より切迫した、身勝手な恐怖として迫ってきた。深く愛するものを失うことと、もう確かな愛を感じなくなったものを失うのとでは、悲しみの度合いは比較にならないが、後者の嵌る失意の沼の深さもまた計り知れない。